口腔ケア
口腔ケアとは,詳しく言うと「口腔清掃,歯石の除去,義歯の調整・修理・手入れ,簡単な治療などにより,口腔の疾病予防,機能回復,健康保持増進さらにQOLの向上を目指した技術である。」と言われています。
口腔ケアの目的
- 誤嚥性肺炎の予防
- 口腔疾患の予防
- QOL(Quality of life)の向上
どうして口腔ケアが注目されるようになったのか?
それは口腔ケアが,高齢者の死亡原因上位を占める誤嚥性肺炎の予防に非常に効果的であるという結果が示されたからです。これは日本発の調査研究からです。約10年前に“口腔ケア”という言葉をきくことはほとんどありませんでした。当時,静岡の米山先生(大学院の講義でお世話になりました。)を中心に広島大学の吉田先生(私の医局時代の先輩です。)らが肺炎予防に口腔ケアが効果があることを示したのです。この事実はいろんな所で発表され,国際的にも認められています。この成果が,ここ数年の口腔ケアの広がりとなって表れているのです。当時の状況を知る私としては,とても喜ばしい限りです。
実際の口腔ケア
歯がある人には,歯ブラシでのブラッシングが基本です。歯ブラシで汚れを落とすと言えばとても簡単そうですか,これがなかなか難しいのです。第一の関門は,普通の人には「汚れ(歯垢)が見えない。」という現実があります。学校を卒業した歯科医,歯科衛生士でも卒業したて頃は,歯についている汚れが見えません。歯と似た色をしているので,とても分かりにくいのです。
ブラッシングトレーニングがポイント
歯についた歯垢は普通の方なら見慣れないので,より分かりにくいと思います。そこで歯ブラシといえどもトレーニングが必要です。トレーニングを職場で,何人かで受けたいと希望されるグループがございましたら,一度私共に相談してください。
歯ブラシにプラスして
歯と歯の間を磨きましょう。高齢者の口の中は,歯と歯の間に物がつまりやすくなっています。この汚れをとるには,歯間ブラシが便利です。
入れ歯も洗いましょう
入れ歯も汚れが溜まります。できれば専用のブラシを使うと効率的にキレイになります。また,義歯洗浄剤につける場合も,ブラシでキレイにしてからにしましょう。
歯の無い人,歯のない部分もスポンジやブラシを使いましょう
歯の無い歯ぐきも,歯ぐき用のスポンジやブラシで清掃しましょう。どうしても,歯の無い人ほど「歯が無いから」と口の中に気を使わなくなるそうです。そのせいなのか,歯の無い高齢者の肺炎の発生率もある人と同様に高いものがあります。これは口の中をキレイにすることにより予防できますので,歯の無い人も口の中に気を使う必要があるという調査結果が出ています。
口腔ケアにおける今の問題
介護を受ける人のケアプランは,要介護者,家族の同意が大前提になります。残念ながら現段階では,「口腔ケア」の認知度は低い状況です。まず命を脅かす肺炎予防のために口腔ケアに取り組んではどうでしょうか?
私たちは
1. 噛める状態作り
2. 噛める状態作り
3. 噛める状態作り
という状況を維持していくことを応援しています。
食欲は最後まで無くならない欲求です
「もう認知症だからいいや!」 「本人もよくわからなさそうだから・・・」
等々家族の方のサポートや意識で状況は大きく変ってしまいます。今の日本を作ってくれた大先輩たちです。いずれ皆もそうなるかもしれないのです。贅沢じゃなくても,美味しいものを美味しいといって食べられる状況,体をこわさず長生きできる状況作りをサポートできればと思います。
実際には
- 家族の方の口腔ケアトレーニング
- 介護担当の方の口腔ケアトレーニング
- 週1回の歯科衛生士の訪問によって普段とれない汚れをすみずみまで落とす徹底的な口腔ケア
などを行っています。